重量 | 0.01 |
---|---|
備考 | - |
雇われ兵士の日誌の一部。
リスクは低く実入りは大きい。奴らはそう言った。バカだった。直感を信じるべきだった。
しかし、こんな事態を予想できるはずがない。時にはうまくいかないこともあるとはいえ、
鋭敏な頭脳と鋭い剣をもってすれば、大抵は窮地を切り抜けられるものと思っていたのだが。
あの告知にはクステフォン王の印章が付いていて、冒険者と兵士を募っていたのだ。
簡単な仕事で相当の金を手に入れたい者は、ケミの中央広場に集合するようにと。
当時、私は仕事にあぶれ、手持ちの金も尽きていた。告知が変だとも思わなかった。
砂漠の街道に出没する蛮族が勢力を増し、目に余るようになることはよくある。
王が無法者を雇ってちょっとした部隊を編成し、蛮族を隠れ家に追い返そうと考えても不思議はない。
女も酒場も全く見当たらない砂漠での仕事は退屈だが、実入りはいい。
蛮族というのは、数で不利になると戦わず逃げ出すものだから、
無事に戻れる可能性も悪くないはずだ。これまでに経験した戦争よりもずっと楽だろう。
悪くても、いつも同じことだ。そう思った。だが違った。
告知に応じて、かなり人数が広場に集まった。
もちろん大半がスティギア人だったが、北方から来た流れ者もいた。
彼らは少し離れた場所に少人数で固まっていた。不安な様子だった。
王室の衛兵が現れて、王の使者のために広場の中央を空けさせた。
召集に応じて集まった種々雑多のごろつきを見渡すと、その使者はこう告げた。
「王は財宝探しを必要としている。古代都市の遺跡が発見されたのだ。
その遺跡に向かい、遺跡で見つかる財宝のすべてを回収するという役目を果たす、
勇気ある者たちが必要なのだ。回収した財宝に対して一定の金を与える。
見たところ遺跡は無人である。遺跡や財宝の場所が一般大衆に知れわたることは
望ましくないので、参加に当たり条件を三つ設けることにした。
第一に、遺跡までは目隠しをして荷車で移動する。
第二に、遺跡の中にいる間は遺跡の外との接触を一切禁止する。
第三に、これを身に着けてもらう。」
使者は手に持った金色の腕輪を差し上げた。緑色の宝石が光り輝いた。
遠くて細かいところまでは見えなかったが、すぐに腕輪の値打ちについて考えたことは覚えている。
あれがすべて本物であれば、それのみでもこの仕事を受ける価値がある。
「どういう仕掛けだ。」恐ろしげなハンマーを持ち、革で身を包んだ、
たくましい兵士風の男が尋ねた。同感だ。何かがおかしい気がした。
事実にしては、うま過ぎる話だ。
ゆったりとした黒い服の男が、王の使者を押しのけて現れると、
疑問を口にした兵士に向かってこう言った。
「仕掛け?そう、これは簡単な仕掛けなのだ。」彼が腕を差し上げると、
やはり金色の腕輪を持っていた。ついさっき使者が持っていたものと全く同じもののようだった。
「遺跡で見つけた物を何か一つでも着服したり、遺跡から逃げてこの腕輪を売ろうなどと
考える不届き物は、罰を受けることになる。そいういう仕掛けだ。」
黒い服の男が手を振ると、それは金色の腕輪ではなく、
ぎらぎらした緑色の目を持つ小さな金色の蛇になっていた。
彼はそれを、たくましい兵士の顔を目がけて投げつけた。
男は悲鳴を上げて顔をかきむしったが、遅かった。ガタガタと震え出し、口から泡を吹き、
血の気が引いて真っ青になり、そのままドサリと倒れた。兵士の体は震え続けていた。
黒い服の男が死にかけの兵士に近寄り、ぎらぎらした蛇を地面から拾い上げた。
すると、それはまた腕輪だった。
不安になった群衆がざわめいた。セトの神官が使う血塗られたナイフには慣れていたが、
これほどの魔法は、もっと暗い力との結びつきを意味しているに違いない。
闇の中で人間の魂を汚染し、決して消えることはない。そういった種類の結びつきだろう。
「さあ、条件を受け入れる者は前に歩み出よ。」再び王の使者が前に出ると、群衆に語りかけた。
黒い服の魔道士は衛兵の後ろに下がった。
群衆のおよそ半分が、すぐさま使者の前に歩み出た。冒険を求めているようだった。
だが、すぐに立ち去った人々も多かった。たった今見せられたものに不安を覚えたのは明らかだった。
私は迷っていた。自分は迷信的ではないが、この世界には理解を超えた事物が存在していて、
それに関わらない方が無難だということも知っていた。
一方、私の財布は空で、私の口は強い酒を飲みたがっていた。
直感を信じるべきだった。結局、私は愚かな道を選んでしまい、
ここ追放の地で死ぬ運命にある。他の追放者と同様に、砂漠で朽ちるのだ。