幼い頃、ずっと思い描いていた夢がある。
それは内気だった私に感動をくれて、初めての友達もくれた"マジック"。
だから気づけば夢中になっていたし、いつの頃からかマジシャンになりたいとも思っていた。
けれど今大学に通う私は、バイトを掛け持ちしながら家に帰って寝るだけの毎日。
隙間時間には唯一楽しみにしているゲームの実況動画を見て過ごしていた。
もうきっと夢は叶わないと諦めていたから。
……大好きなマジック道具は、少し埃が被っていた。
そんな時、豪華客船で開かれるマジックショーの招待状が届いた。
それも客側ではなくショーを披露する側といしての招待状。
実力次第ではプロマジシャンの可能性も示唆された。
嬉しかった。また夢を見てしまった。もしかしたら……を思い描いてしまった。
だが、そこに待っていたのは夢のようなスペックを持つ男達と不思議なキツネのぬいぐるみ。
キツネは言う。
『その器用さで、彼等の誰かからお金を巻き上げてよ。
僕、面白いドラマが見たいんだ!』