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&size(16){MASS FOR THE DEAD};
''これは、もう一つの物語(オーバーロード——)''
西暦2138年現在、DMMO-RPGという言葉がある。
<Dive Massively Multiplayer Online Role Playing Game> の略称であり、
サイバー技術とナノテクノロジーの粋を集結した脳内ナノコンピューター網
ニューロンナノインターフェースと専用コンソールとを連結。
そうすることで仮想世界で現実にいるかのごとく遊べる、体感型ゲームのことである。
つまりはゲーム世界に実際に入り込んだごとく遊べるゲームのことだ。
数多開発されたそんなDMMO-RPGの中に、燦然と煌く一つのタイトルがある。
&size(16){YGGDRASIL(ユグドラシル)};
700種類を超える種族、2000を超える職業クラス、6000を超える魔法の数々、
自身のアバターやアイテム、住居等の外装、内包データの設定が可能、プレイヤーを待ち構えるのは、
9つある世界からなる広大なマップ。
戦闘が主であった既存のDMMO-RPGと一線を画す、無限の楽しみを追求できるゲームとして、
日本国内においてDMMO-RPGといえばユグドラシルを指すとまで言われる評価を受けていた。
かつて一大ブームを巻き起こした仮想現実体感型オンラインゲーム”YGGDRASILユグドラシル“は、
今まさにサービス終了を迎えようとしていた。プレイヤーであるモモンガも仲間と栄華を誇ったギルドで
一人静かにその時を待っていた。しかし、終了時間を過ぎてもログアウトしないゲーム。
そして、目の前に広がるのは・・・崩壊したナザリック地下大墳墓——。
*最古図書館
ナザリック地下大墳墓第十階層——最古図書館(アッシュールバニパル)。
至高の御方々が配置された膨大な蔵書に目を通し、先人の智慧を学び続ける。
いつの日か、御方々の役に立つために——。
・・・・・・。
・・・・・・。
ぅ・・・・・・ぁ・・・・・・。
——体が、痺れたように動かない。
混濁した意識を、懸命に整理する。
ゆっくりと息を吸い、声を出そうと努める。
少しずつ自由になりつつある四肢を動かし、
体を起こす。
目に飛び込んで来たのは——崩れ落ちた最古図書館(アッシュールバニパル)
図書館の壁が・・・・・・崩れて・・・・・・。
どうして・・・・・・?
茫然としながら、歩き出す。
*ソロモンの小さな鍵
ナザリック地下大墳墓第十階層——ソロモンの小さな鍵(レメゲトン)。
侵入者を迎撃する、ナザリック地下大墳墓の最終防衛線。
熟練者揃いのパーティーさえ容易く撃退しうる、地下大墳墓最後の砦が・・・・・・
跡形もなく、破壊されていた。
侵入者に襲い掛かるはずの悪魔像は切り裂かれ、
上位エレメンタルを召喚するはずのクリスタルは打ち砕かれていた。
・・・・・・考えられない・・・・・・
天変地異か・・・・・・それとも・・・・・・。
壁と床には、引き裂かれたような痕が
無数に刻まれていた。
・・・・・・まさか・・・・・・敵襲?
信じられない。
第十階層にまで攻め込める者など、いるはずが・・・・・・。
・・・・・・他の皆は・・・・・・?
御方々の安否を確かめないと・・・・・・!
*玉座の間
第十階層は、ナザリック地下大墳墓の最深層——
すべてを擲ってでも、守るべき場所。
第十階層が、ここまで荒らされているということは・・・・・・。
——!!
今の音は・・・・・・何らかの魔法が使用された・・・・・・!?
音は、ソロモンの小さな鍵レメゲトンの奥から・・・・・・まさか!
あの先は、玉座の間。
守護者統括であらせられるアルベド様が控えていらっしゃるはずの場所・・・・・・。
まさか、アルベド様が戦われているのだろうか・・・・・・?
アルベド様が相手をなさるような強者が侵入したのなら、一般メイド程度の力
しか持たない自分が立ち入ったところで何の役に立つというのだろう。
それでも——
一撃ぐらい、盾になれるかもしれない!
死ぬ前に、一度だけでも御方のお役に立てるのなら・・・・・・!
玉座の間に通じる大きな扉を開けると・・・
「魔法の使用に制限はない、か。・・・・・・え?誰?」