大鳥あいは別にゲームになんか興味はありませんでした。
最愛の妹、大鳥こころがゲームが好きだっただけで。
でも、こころと一緒にゲームをするのは好きでした。
こころが好きだと言ったゲームを自分で遊んだりしました。
そのゲームの名前は「夢現~ニエと魔女と世界の焉わり」と
いいました。
大鳥あいは自分がつまらない人間だと思っていました。
特にやりたい事もなく、見つけられずに、過ごしてきました。
でも、妹と一緒にいるのが好きでした。
ずっと一緒にいられると思っていました。
しかし、両親の不仲から、二人は引き離されてしまいます。
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引き離された二人はそれでも仲がよく、親に一年に一度、
二人の誕生日にだけ、会うことを許して貰っていました。
二人はキスをしました。一年に一度の、再会の日に。
離れていても、二人の心は一つだと、そう思っていました。
それは、二年前の誕生日。
いつも通り会い、いつも通りキスをしたその日から、
こころからの連絡が途絶えました。
遠く離れ、連絡も取れなくなった妹を思うと、
とても悲しい気持ちになりました。
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そんな、灰色の日々を過ごしていたある日、
妹が働いているというゲーム会社から、あいに連絡が入ります。
「妹さんの事、助けてあげて」
よくわからないままに、しかし妹のためならと地元で面接を受け、
妹のいる遠い街に上京を決めるあい。
訪ねたゲーム会社には、明るい変な事務員の太刀花なな、
昼夜逆転でいつ仕事をしているのか分からないちびっこ
怪獣シナリオライターの無限堂さき、
あいを呼び出した社長の醍醐ほのか、
そして副社長と呼ばれる、単に飼い犬のばな子といった
個性的なメンバーがいて、あいを受け入れてくれました。
更に、そのゲーム会社は、あの「夢現〜ニエと魔女と世界の焉わり」
を作った会社で、そのリメイク版を現在作成中でした。
こころが好きだと言った、あのゲームを。
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ただ、その肝心のこころは、名字も「柳谷」と変わり、
あいの事を名字で呼び、他人行儀に接してきます。
まるであの親愛の日々が嘘だったように……。
大鳥あいは別にゲームになんか興味はありませんでした。
ゲーム会社に入ったにも関わらず、そもそも前知識は殆ど無く、
ゲーム開発のお仕事は苦労の日々です。
でも、あいは決めたのです。
今開発中のゲームをこの会社の人たちと、
何よりもこころの、妹のために、制作のお手伝いをすることを。
ゲームを完成させる事が、
こころとまた仲良く姉妹に戻れるきっかけになるような……
そんな気がするから。
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