きんとうか。それは願いを送る華―
主人公・鈴村颯太は祖母の葬儀のため、十数年ぶりに海を渡り、父の故郷の島に帰っていく。
瀬戸内海に浮かぶ小さなその島は、行きているものと同じように、 死者を想い、慈しむ、優しい風習の残る島だった。
祖母を送るための「華おくり」の儀式や、 成長した幼馴染のよそよそしい態度に戸惑いながら、颯太は祖母の通夜の夜、 過去になくした知人に似た、記憶のない男に出会う。
波のように繰り返される、出会いと別れ。
それは死者の想いが咲かせるという花、きんとうかが見せる奇跡か幻か―。