はしご
基本情報
重量 | 5.00 |
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備考 | - |
簡素な木製のはしご。
追放の地から遠く離れたどこかで、一人の学者が狂ったように何か書いている。
彼の雇い主が、何百ものつまらない物の説明文を書き記すように命じたのだ。
剣や鎧から繊維や石まで。一覧の次の項目は「はしご」だった。
彼はふと、作業の手を止めて羽ペンを置き、近くの鏡に映る自分の姿を見つめた。
そこには、最盛期を迎えずに年老いてしまった男がいた。雇い主の言いなりで奴隷同然の男が。
「私は何をしているのだろう?」と彼はつぶやいた。
大半は自分が無意識に行ってきた一連の選択が、彼の人生を作り上げたのだ。
渦巻く思考が過去に遡り、出来事の因果関係を逆向きにたどっていくうちに、
人生の重要な分かれ道など、なかったことに気付いた。
今、ここでこうしているのは、何らかの大きな決断の結果というわけではないのだ。
生涯にわたって少しずつ行ってきた選択が、砂漠の砂のように彼の周囲に積み重なり、
静かな絶望の人生を埋めてゆく。流砂がゆっくりと喉を満たし、溺れるのを待っているだけなのだ。
この自覚は彼を打ちのめし、広漠とした悲哀が彼を襲った。
魂の痛みは、かつてまったく感じたことのないほどの激しいものだった。
彼の目から、きらきら輝く涙が一粒こぼれ、作業途中の羊皮紙の上に落ちた。
インクが少しにじんだ。
人生にはなすべきことが他にある。
そう決意した男は羊皮紙を横に置くと、立ち上がって扉に向かって歩き出した。
すると突然扉が開き、凶悪な目をした盗賊が入ってくると、
驚いた学者が、息を呑む間もないうちに彼を突き刺した。
盗賊はこの家に忍び込み、金目の物を探していたところだった。
彼はナイフの学者を服で拭うと、その部屋を物色し始めた。
テーブルの上にあった羊皮紙に目が留まった。
さまざまな物の名前と、それらの詳しい説明が、
死んだ学者の美しい字でびっしりと書き記されている。
彼はにやりと笑うと、羽ペンに手を伸ばした。
数時間後、血とインクの両方にまみれて倒れている学者の死体を警備員が発見したとき、
羊皮紙の「はしご」という言葉の下に、奇妙なメッセージが殴り書きされていることに気付いた。
そこにはこうあった。「ただ登る物だ。バカが。」
警備員は肩をすくめた。こんな説明文など、どうせ誰も読まないのだ。
入手方法
用途
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